2021年3月号

山本織

歌集 2020年8月

山本織愛されるために生まれたはずだろう  やわらかな棘を 持ったサボテン ホームセンターへ行くと、つい観葉植物のコーナーを覗いてしまう。グリーンの持つ癒やし効果は絶大だ。自室でいくつか植物を育てているが、霧吹きで水をやるとつやつやと輝く葉は...
山中隆司

行き場のない鳥

 三月一日は僕の通う県立船出高校の卒業式だ。ついにこの日が来てしまったかと思う。できれば来てほしくなかった。これまで小中高とトコロテン式に進学してきた。ついに自由になる。自由になるの嬉しいが、今は自由になりたくなかった。ようは大学に合格できなかっただけだ。
氷川省吾

ナイフでヒットマン

仕事に夢中になって、不要な残業しちゃったときってない?
ほろほろほろろ

代償

ほろほろほろろ 夢を見た。車に撥ねられる夢だ。 気付けば俺は通い慣れた通学路の一角を歩いていた。高い塀で縁取られた静かな住宅街。だが、周りの景色はすりガラス越しのようにあやふやで、遠のくほど白くぼやけていく。俺が前へ足を踏み出すと、前方のも...
ナタリー爆川 満244歳

かますケーション・ブレイクダウン

天野満 コミュニケーション能力不足が俺の人生を脅かしている。 「コミュ力不足」についての懸念は、幼少の頃に俺の中に芽生え、人と接する機会が増えた大学時代に顕在化し、寝ても覚めても俺を苦しめるようになった。 もちろん、俺とて、ただただ手をこま...
マサユキ・マサオ

人の脱糞を笑うな

マサユキ・マサオ それは社会人一年目の春のことです。 輝かしい夢も希望も二週間程で挫折した私は、社会に絶望し、かといってすべてを投げ出す勇気もなく、干からびた魚の目をして日々仕事に勤しんでいました。 そんなある日のこと、無意味な営業をサボっ...