2022-10

マサユキ・マサオ

教育

マサユキ・マサオ私が念願のスマホを手に入れたのは高校入学直後のこと。まずはラインをダウンロードして、幼馴染の隆君に『おちんちん』と送りました。私の初めてのメッセージは正確に送信され、既読マークが付きました。私は呆然とし、そして怒りが込み上げ...
山中隆司

常世の国への旅

山中 隆司今、私は見知らぬ山伏装束の男に掴まって空を飛んでいる。あたりは水の底を思わせるほど仄暗く、星明りを思わせるきらめきが点在している。このまま本当におばあちゃんに会えるのだろうか怪しい。なぜこうして見知らぬ男に掴まっているかというと、...
モモ

彼岸花

モモいっそ毒々しいほどの鮮やかな赤に目を奪われ、つい足を止めてしまったらしい。先に行ってた友人がわざわざ戻って声を掛けてくる。「おい、春秋どうしたんだよ? お前に花を眺めるだなんてご趣味があったとは思わなかったなあ……」その言葉には揶揄の響...
福原大輝

家族の大切な熟女

福原大輝身体を起こすのが億劫なこともあるし、ずっと寝ていたい。わたし、もうそこそこの歳なのかも。熟女ってテレビで言ってた気がする。わたしがけだるげに身体を起こすと、ママが顔をのぞき込んできた。眉根を寄せて心配そう。今日はわたし、散髪に行った...
福原大輝

才能の華を咲かせるために

福原大輝足元から風を感じた。それでも雄一は気にすることなく、目の前のプリントに集中して採点を続けた。だが、ふふんという笑い声にはさすがに声をかけた。「才華ちゃんっ」その声にビクッと身体を震わせるが、やがてうふふと彼女は笑った。小学一年生の才...
kenken

宿無し

kenken第一章 土色の明日1承応二年(西暦一六五三年)の話である。二十二歳になる味噌職人の彦八は、走っていた。通り過ぎる風が、目に染みる。目に涙が浮かぶ。心ノ臓が早鐘を打った。森林に囲まれた、人一人が歩けるだけの細い道を、躍起になって走...
ナタリー爆川 満244歳

ナタリー・ダイアリー vol.1

天野満ナタリー爆川(満244歳)○改名さらば、天野満よ。今までありがとう。唐突ではあるが、ペンネームを変更することにした。バンドを始めた際に、ステージネームを使ったりする人がいるが、私も例にもれない。私は本名をもじり、244と名乗っていたが...
原田

短編集

原田母窓の外は雪混じりの雨足だった。少し遠くに聞こえる車の往来はまだ幼かった頃の我が家の前の道を彷彿とさせた。そこには大きな木が何本も生え、大きな窓のむこうにカーテンとなって存在していた。それはもうない。津波で塩害の犠牲となった木々の多くは...
氷川省吾

屍病

機密の研究所にスカウトされて就職した榊。そこで課された仕事は、とある病原体の解析だった。この病原体は他に類を見ない性質を持ち、万が一漏出すれば、研究所ごと抹消する処置がとられる。研究を進歩させて仮眠を取った榊が目を覚ますと……。