ナタリー爆川 満244歳

ナタリー爆川 満244歳

無色のコツ 第一回

ナタリー爆川 満244歳○まえがき「無職は案外難しい」これは私が、無職の身の上になって痛感したことである。人々聞かせれば「何をおかしなことを言ってやがる」とドブネズミの死骸でも見るような目で私を見てくるのだが、仕方ないことである。この難しさ...
ナタリー爆川 満244歳

ナタリー・ダイアリー vol.1

天野満ナタリー爆川(満244歳)○改名さらば、天野満よ。今までありがとう。唐突ではあるが、ペンネームを変更することにした。バンドを始めた際に、ステージネームを使ったりする人がいるが、私も例にもれない。私は本名をもじり、244と名乗っていたが...
ナタリー爆川 満244歳

天野日記 その弐

天野満繰り返し見る夢 同じ夢を何度も見ている。不思議なことに同じ夢を何度も見ていると、夢の中で「これは夢だ」と気づいてしまうのだ。 どのような夢であったかというと、私がテレビ番組に出演する夢である。 司会進行を務めるのは、かのダウンタウンで...
ナタリー爆川 満244歳

RUN RUN RUN

天野満 らんらん、と歌いながら少年は走る。 空には雲ひとつなく、平原はどこまでも広がっている。 吹き抜ける風は少しも澱みを抱えておらず、少年のシャツの裾を軽快になびかせていた。「よう、走るのは楽しいか?」 一羽のカラスが少年に話しかけた。少...
ナタリー爆川 満244歳

ひな祭りチャンネル

天野満「このままやったらワシらは終わりや! どないかせな!」左大臣が怒鳴った。顔に浮かび上がっている無数の血管が今にも破裂しそうだ。「ちょっと、左さん大声を出されるな。お内裏さまたちの御前ですぞ」と、右大臣が左大臣をなだめる。「よい。気にす...
ナタリー爆川 満244歳

化けよ!

損をすることを承知のうえで掟を破る者がいる。彼らはなにゆえ掟を破るのか。それは愛に狂ったからだ。  ならば私も愛に狂い掟を破ったおかしな人間ということになる。
ナタリー爆川 満244歳

C’est la vie !

天野満 暮れの雑踏する駅前に、ため息が紛れて消えていくーー。 ため息をつくと幸せが逃げるよ、と言ったのは誰だったか。 家族? 友人? 先生? それともテレビかラジオで聞いたことだったか。 誰だっていい。それが明らかになったところで、このため...
ナタリー爆川 満244歳

天野日記

天野満◯貼り紙「放置自転車 します」 近所のコンビニの窓にこんな貼り紙がしてあった。 放置自転車をしたらダメじゃないか。一個人ならまだしも、いや、それでもダメなんだけど、ましては一企業が店先に紙を貼り出して宣言するような内容ではない。俺は考...
ナタリー爆川 満244歳

ハゲはあけぼの

天野満 ハゲはあけぼの。やうやう薄くなりゆく生え際、少しテカりて、髪は薄く風にたなびきたる。 鏡に写った自らの貧しい頭髪が、俺を薄毛界の清少納言にした。 ハゲたくないよー、ヤダヤダヤダ。と床に転がって駄々をこねても髪の毛は生えてこない、どこ...
ナタリー爆川 満244歳

神様が見てるとしたら

天野満「本倉さん、どうしたんですか、その格好」 駅前の欧風のモダンな作りのカフェの中にあって、本倉さんの身なりは相当に不釣り合いだった。 ヨレヨレのドテラに猿股、腹巻き姿で、髪の毛は爆発したように乱れ、線の細い顎や頬から無精髭がぴょこぴょこ...