マサユキ・マサオ

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チョコパイを作るために生まれてきた男

マサユキ・マサオ男はチョコパイを作るために生まれてきた。誰に教えてもらうでもなく、物心ついた頃からチョコパイを作っていた。どんなお菓子メーカーやパティシエの作るものよりも美味しくチョコパイを作ることができた。誰もが男からチョコパイの作り方を...
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スイカを焼く話

マサユキ・マサオ私が十二歳になったある夏、父は仕事を辞めた。父は言った。「明日から、焼きスイカを売ることにしたんだ」「そうなのよ、まきもお父さんの仕事を応援してあげなさい」母が言った。それから数日後、母もパートを辞め、父と共に焼きスイカを売...
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教育

マサユキ・マサオ私が念願のスマホを手に入れたのは高校入学直後のこと。まずはラインをダウンロードして、幼馴染の隆君に『おちんちん』と送りました。私の初めてのメッセージは正確に送信され、既読マークが付きました。私は呆然とし、そして怒りが込み上げ...
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数学猫の見つけ方

マサユキ・マサオ 微分のグラフは猫が疾走した跡である。 積分によって出された面積が、猫の存在を証明している。 それを教えてくれたのは、高校時代お世話になった数学の先生だ。 当時僕は、理数系科目、特に数学で大変な思いをしていた。 そのくせ頑な...
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彼の思い出

マサユキ・マサオ「文子、さっさと荷物運びなさいよ」「分かった、分かった。あぁっ! 机の中は私が出すからいいってば!」 葛城文子は母親の手伝いを借りて、引越しの用意を進めていた。念願叶って志望する教育系の大学に合格し、今春からは故郷を離れて下...
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机上の歌詞集(仮)

マサユキ・マサオ 私がネット上の某掲示板に歌詞(仮)を投稿していたのは、平成も半ば、十年以上前のことになる。行き場の無いパッションを抱えていた私は、本当はバンドがやりたかった。しかし、私は楽器が出来なかった。正確に言うと楽器を練習する根性、...
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キツツキ

マサユキ・マサオ『うそつき きつつき きは つつかない うそを つきつき つき つつく』          谷川俊太郎『うそつき きつつき』より「皆さん、嘘つきはキツツキの始まりです」 セミナーの講師は言った。ホワイトボードにもデカデカと書...
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タイムトリッパー政宗

マサユキ マサオ 伊達政宗が私の学校に転校してきたのは、中学二年生になったばかりの春のことです。学年合わせて百人足らずの小規模校ですから、噂はたちまちのうちに広まりました。「ねぇねぇ、隣のクラスに転校してきた男の子、伊達政宗だっていうのホン...
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石原さん日記

マサユキ マサオ 暇なので、石原さんの日記を書くことにしました。 石原さんというのは架空の人物です。一応、四十代未婚のおじさんということにしておきます。ゴリラみたいな石原さん、を略してゴリハラというあだ名で呼ばれています。 しかし、若い女性...
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さよならSunny Summer Days

マサユキ・マサオ 大学一年生の秋に僕は塾講師のバイトを始めた。 初日の実習日がたまたま二十歳の誕生日だった。 誰にも言わず帰ろうと思っていたのに、帰り道で一緒になった先輩につい漏らしていた。 もっと早く言いなよ、と小突かれつつ、夜更けのビル...