福原大輝

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六九萬はロックマン!

福原大輝今日タツヤは珍しく早起きして、家を出た。向かう先は雀荘である。いつも通り素人から大金をせしめるわけではない。悪さをするヤクザまがいのやつをやっつけるわけでもなかった。タツヤは麻雀の前では善でもあり悪でもあった。そういうと聞こえがいい...
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家族の大切な熟女

福原大輝身体を起こすのが億劫なこともあるし、ずっと寝ていたい。わたし、もうそこそこの歳なのかも。熟女ってテレビで言ってた気がする。わたしがけだるげに身体を起こすと、ママが顔をのぞき込んできた。眉根を寄せて心配そう。今日はわたし、散髪に行った...
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才能の華を咲かせるために

福原大輝足元から風を感じた。それでも雄一は気にすることなく、目の前のプリントに集中して採点を続けた。だが、ふふんという笑い声にはさすがに声をかけた。「才華ちゃんっ」その声にビクッと身体を震わせるが、やがてうふふと彼女は笑った。小学一年生の才...
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カンニング森

福原大輝「だから、俺はカンニングなんかしてねえんだよ!」 金髪を左半分刈り上げている男が身を乗り出してそう言ってきた。両耳にあいているピアス穴とこの態度を見る限り、犯人のその態度だった。「落ち着いて、その時の状況を聞かせてくれる?」 対して...
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詐欺師の彼女

福原大輝研究室で後輩の女の子が声をかけてきた。僕は目の前のディスプレイに集中し始めたときだったので少しイラついたけど、彼女のいる右側に顔を向けた。僕たち数十人の研究員はデスクを向かい合わせにくっつけて座っている。彼女は僕から一つ飛ばしの席に...
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思い出の地図

福原大輝思い出の場所なんだ、ってパパは言った。どうやらここは、パパがまだ小さかった時、ちょうど僕くらいの歳の時に過ごした場所らしい。パパの実家――僕のおじいちゃんとおばあちゃんの家からは車で一時間かけてやって来た。どんな場所なんだろう。胸を...
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どこまでも高くなるビルと花の写真

福原大輝 私は部屋でパソコンに向かっていた。時折もじゃもじゃに伸びきった黒髪を掻いては、目の前に落ちてきた前髪を眼鏡の上に持ち上げた。室内は暑かった。激しくキーボードにキーを打ち込むが、汗が噴き出すだけで、それが何の意味もなさないように感じ...
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青いマントのヒーロー

福原大輝 ――世界が生まれた日の話を、お前さん、知りたいか? ……。 老人は返事も待たずに話し始める。 ――あの日、マントの少年がここに舞い降りてのう……。 ――青いマント……。そう、まるで空のような青い青いマントじゃった。 老人が見上げる...
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二つの世界の境目で

福原大輝 二つの世界の境目で 竹林の中で目を凝らしたら、あの娘が見えた。遠くからでもその輪郭ははっきりとしていて、そこから歌が聞こえてくる。彼女が歌っているに違いない。真っ暗闇の中で物陰をつたい、その歌が導くままに近づいて行った。何の歌なの...
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空の章

福原大輝 ユビキタス先生は子どもたちに向かって言った。「空を見てみなさい。あれが戦いの色だよ」 ミトは子どもたちと一緒に空を見上げた。いつもの、曇天のような鉛色の空だった。灰色の砂埃が舞っていて晴天であってもそう見えてしまうのだ。がれきの山...