福原大輝 空の章 福原大輝 ユビキタス先生は子どもたちに向かって言った。「空を見てみなさい。あれが戦いの色だよ」 ミトは子どもたちと一緒に空を見上げた。いつもの、曇天のような鉛色の空だった。灰色の砂埃が舞っていて晴天であってもそう見えてしまうのだ。がれきの山... 2021.08.16 福原大輝
平田ヘイデン コーヒーブレイク 平田 ヘイデン 執筆していた論文の最後に入れたピリオドが集中を解く一滴の呼び水になった。 思考を占拠していた研究内容が霧散して、空っぽになった頭をドラミングしたくなるような愉快な気持ちが湧いてくる。「ふひ……へへへ」 まとめ終えた論文を保存... 2021.08.16 平田ヘイデン
福原大輝 嘘の五索(ウーソー) 福原大輝 南四局オーラス。最終局だった。 タツヤは山の中から一つ、麻雀牌を威勢よくつかんだ。それを手元にある十三牌の中に加え、その中から不要な牌を一つ選んで捨てた。麻雀はこの「ツモる」動作と「切る」動作を繰り返し、自分の手の中で役を作り上げ... 2021.08.16 福原大輝
福原大輝 花は無口なままで 福原大輝花は無口なままで 福原大輝 ピアノの伴奏が流れ始めて、聞いたことのあるメロディが何の引っかかりもなく右耳から左耳へと抜けていく。高辻修介はさぼっていると思われぬように、周りに合わせて口を開いた。この曲が「あおげばとうとし」なのは知っ... 2021.08.16 福原大輝
平田ヘイデン コンパニオンバード 平田 ヘイデン 小鳥のヒナ飼えない?と友人から電話が来た。自分が住んでいるアパートはペット応相談なので、確認してから連絡するわ、と返した。 管理会社の営業時間を待ってから問い合わせると、小鳥は飼ってよいとの回答を貰うことができた。独り身も長... 2021.08.16 平田ヘイデン
福原大輝 二人、夜行 福原大輝 見渡す限りの荒野と夜空が青く広がっている。目の前には線路がずっと続いていて、そのレールの鋼鉄は真鍮色に淡く光って僕達の進む道を照らしていた。 太陽はとっくに過ぎ去って、空には帯状に星々が見えた。目前の線路と画が重なって、その星々の... 2021.08.16 福原大輝