歌集 2020年8月

公園で烏賊焼きを喰う
  本当に愛は地球を救うのですか

「愛は地球を救う」をキャッチフレーズとする某番組が好きになれない。チャリティー番組自体はいいと思う。様々なメディアが登場する中でも、まだまだテレビの力は大きい。しかし、観ていて感動を強要されているような感覚になること、マイノリティがそのための「コンテンツ」にされてしまっているように思えることから、なんとなく苦手意識を抱いてしまうのだ。
「愛は地球を救う」という言葉自体は嫌いではない。しかし、地球を救うよりもまず、自分が救われたいと思う瞬間がある。
 その日はいつになく酔っていた。なんとか終電に滑り込み、最寄り駅までたどり着いたものの、ぐるぐると回る視界の中、このまま帰宅するのは不味いと思った。少しでも酔いを醒まそうと、自販機で缶コーヒーを買って、公園のベンチに座った。しかし、プルタブを開けた缶コーヒーは、傾けた瞬間に完璧な流れで手から離れ、服に不思議な地図を描きながら地面へと落下した。何のリアクションも取れないまま、地面に吸い込まれていくコーヒーを眺めた。図らずも、地球にコーヒーを奢ってしまった。
 誰か私を救ってくれと、叫びたい気分だった。
 それは、情けない、最悪な夜だった。だからこそ、どうしようもなく愛おしい夜だった。そういう一瞬を、私は歌にしていきたい。

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