歌集 2020年8月

窓のない病室の壁の窓の絵に掛けられているレースカーテン

「本当の優しさ」とは何か。定義はきっと人それぞれだろう。私は、「本当の優しさ」とは「見返りを求めない思いやり」「無償の愛」であると思う。それは、美しく、清らかで、まぶしい。
 この歌はそのような、私の思う「本当の優しさ」を詠んだものだ。壁に飾られている窓の絵は、あくまでも絵である。窓枠を模した額縁を外せば、現れるのは真っ白な壁なのだ。しかし、その絵に誰かがレースカーテンを掛ける。窓にはカーテンが必要でしょう、と微笑みながら。
 風の吹かない部屋で、レースカーテンは揺れることも膨らむこともなく、そこにある。当たり前のように、ひどく自然に、ただ静かにそこにある。「本当の優しさ」とは、つまりそういうものだと思うのだ。そしてそれは、私が憧れてやまないものでもある。いつか、「本当の優しさ」を持った人になりたい。

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