意識の残存

氷川省吾

 昔、死後の意識について考えたことがある。こういうと幽霊などをイメージするが、私の場合は死後に肉体に意識が宿り続けたらどうかということだった。
 もしも幽霊のように、肉体が機能停止しても意識が残り続けるとするならば、それはどこかにふわふわと飛んでいくのではなく、元あった体の方に残り続けるのではないか? 死んだら体が何g軽くなったから魂があるという眉唾のストーリーより、魂があるとしても体から離れないので重さが変わるわけがないという方が納得できる気がする。
 もしそうなら、いろいろと困ったことになる。棺桶に入れられて埋葬されるなら、体から離れられない魂は、ずっと土の中で過ごさなくてはいけなくなる。これはこの上なく退屈だろう。しかすると何千年も、のちの考古学者に発見されるまで、ずっと真っ暗な土の中にいなくてはいけないのだ。
 日本のように仮装されるなら魂が解放されるかもしれない。しかし、灰になっても魂が残っているなら、やはり同じように困ったことになる。棺桶以上に狭苦しい骨壺の中で、土葬と同じように暗闇で過ごすことになる。
 果たしてどちらなのかと、私は火葬場に向かう棺桶の中で考えている。

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