ほろほろほろろ

祝福

ほろほろほろろ 籠に囚われた虫が辿る道は二つ。自由と思考を奪われ、ただ餌を貪ることしかできない生き物として死ぬまで飼い殺されるか。或いは利用されるだけ利用され、その身から価値を絞り尽くされた後に無残に捨てられるか。人間は虫に対して情なんても...
マサユキ・マサオ

机上の歌詞集(仮)

マサユキ・マサオ 私がネット上の某掲示板に歌詞(仮)を投稿していたのは、平成も半ば、十年以上前のことになる。行き場の無いパッションを抱えていた私は、本当はバンドがやりたかった。しかし、私は楽器が出来なかった。正確に言うと楽器を練習する根性、...
ナタリー爆川 満244歳

ハゲはあけぼの

天野満 ハゲはあけぼの。やうやう薄くなりゆく生え際、少しテカりて、髪は薄く風にたなびきたる。 鏡に写った自らの貧しい頭髪が、俺を薄毛界の清少納言にした。 ハゲたくないよー、ヤダヤダヤダ。と床に転がって駄々をこねても髪の毛は生えてこない、どこ...
ナタリー爆川 満244歳

神様が見てるとしたら

天野満「本倉さん、どうしたんですか、その格好」 駅前の欧風のモダンな作りのカフェの中にあって、本倉さんの身なりは相当に不釣り合いだった。 ヨレヨレのドテラに猿股、腹巻き姿で、髪の毛は爆発したように乱れ、線の細い顎や頬から無精髭がぴょこぴょこ...
マサユキ・マサオ

キツツキ

マサユキ・マサオ『うそつき きつつき きは つつかない うそを つきつき つき つつく』          谷川俊太郎『うそつき きつつき』より「皆さん、嘘つきはキツツキの始まりです」 セミナーの講師は言った。ホワイトボードにもデカデカと書...
福原大輝

青いマントのヒーロー

福原大輝 ――世界が生まれた日の話を、お前さん、知りたいか? ……。 老人は返事も待たずに話し始める。 ――あの日、マントの少年がここに舞い降りてのう……。 ――青いマント……。そう、まるで空のような青い青いマントじゃった。 老人が見上げる...
氷川省吾

怪異は100話目の後に

幽霊と地球外生命体ってどっちが怖い?
ともえ

コンタクト

ともえ 男が戸を開けると、メガネが机や壁一面にずらりと並んでいました。いくつかのメガネを試しにかけてみましたが、どうにもしっくりきませんでした。「なにをお探しですか?」 声のする方を向くと、度の入っていないメガネ越しにすらりとしたスーツ姿の...
ともえ

メイちゃんはうしろむき

ともえ わたしの友達、メイちゃんはうしろむきでした。 小学生のころ、ほかのクラスメイトとあまり打ちとけられなかったわたしに明るく声をかけてくれたのが、メイちゃんでした。休み時間に一人で本を読んでいるわたしがその快活な声に顔を上げてみると、な...
ほろほろほろろ

砂漠の行列

ほろほろほろろ これは、大陸西部を旅したときの話だ。 そこはとてつもなく広大な砂砂漠で有名な土地だった。当時の俺は己の足のみで旅をしていたが、砂漠に足を踏み入れる前に寄った町で行商人に話を聞くと、ラクダを連れずに砂漠を横断するのは自殺行為だ...