福原大輝

詐欺師の彼女

福原大輝研究室で後輩の女の子が声をかけてきた。僕は目の前のディスプレイに集中し始めたときだったので少しイラついたけど、彼女のいる右側に顔を向けた。僕たち数十人の研究員はデスクを向かい合わせにくっつけて座っている。彼女は僕から一つ飛ばしの席に...
ナタリー爆川 満244歳

ひな祭りチャンネル

天野満「このままやったらワシらは終わりや! どないかせな!」左大臣が怒鳴った。顔に浮かび上がっている無数の血管が今にも破裂しそうだ。「ちょっと、左さん大声を出されるな。お内裏さまたちの御前ですぞ」と、右大臣が左大臣をなだめる。「よい。気にす...
福原大輝

思い出の地図

福原大輝思い出の場所なんだ、ってパパは言った。どうやらここは、パパがまだ小さかった時、ちょうど僕くらいの歳の時に過ごした場所らしい。パパの実家――僕のおじいちゃんとおばあちゃんの家からは車で一時間かけてやって来た。どんな場所なんだろう。胸を...
福原大輝

どこまでも高くなるビルと花の写真

福原大輝 私は部屋でパソコンに向かっていた。時折もじゃもじゃに伸びきった黒髪を掻いては、目の前に落ちてきた前髪を眼鏡の上に持ち上げた。室内は暑かった。激しくキーボードにキーを打ち込むが、汗が噴き出すだけで、それが何の意味もなさないように感じ...
ナタリー爆川 満244歳

化けよ!

損をすることを承知のうえで掟を破る者がいる。彼らはなにゆえ掟を破るのか。それは愛に狂ったからだ。  ならば私も愛に狂い掟を破ったおかしな人間ということになる。
マサユキ・マサオ

数学猫の見つけ方

マサユキ・マサオ 微分のグラフは猫が疾走した跡である。 積分によって出された面積が、猫の存在を証明している。 それを教えてくれたのは、高校時代お世話になった数学の先生だ。 当時僕は、理数系科目、特に数学で大変な思いをしていた。 そのくせ頑な...
平田ヘイデン

蟲中天

平田 ヘイデン 嫌いな上司を捕まえた。 夜の公園で、コンビニの袋をぶら下げたそいつと、帰宅中のわたしはばったり遭遇した。押し付けられた仕事をようやく終わらせて疲労困憊していた私は、買い物かごを持って行くのと同じ無感情さでそいつの袖を掴んで自...
マサユキ・マサオ

彼の思い出

マサユキ・マサオ「文子、さっさと荷物運びなさいよ」「分かった、分かった。あぁっ! 机の中は私が出すからいいってば!」 葛城文子は母親の手伝いを借りて、引越しの用意を進めていた。念願叶って志望する教育系の大学に合格し、今春からは故郷を離れて下...
ナタリー爆川 満244歳

C’est la vie !

天野満 暮れの雑踏する駅前に、ため息が紛れて消えていくーー。 ため息をつくと幸せが逃げるよ、と言ったのは誰だったか。 家族? 友人? 先生? それともテレビかラジオで聞いたことだったか。 誰だっていい。それが明らかになったところで、このため...
ナタリー爆川 満244歳

天野日記

天野満◯貼り紙「放置自転車 します」 近所のコンビニの窓にこんな貼り紙がしてあった。 放置自転車をしたらダメじゃないか。一個人ならまだしも、いや、それでもダメなんだけど、ましては一企業が店先に紙を貼り出して宣言するような内容ではない。俺は考...